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着物大事典
「着物を着てみたいが、どのような種類があるのだろう」「シーンに合わせた着物の選び方がわからない」という方もいるのではないでしょうか。
着物の種類は大きく15種類に分けられ、自身の立場や着物の格などによって適したシーンが異なります。マナー違反とみなされないためにも、事前に着物への理解を深めることが大切です。
今回は、着物の種類を格ごとに解説するとともに、着用シーン別の一覧表や格を左右する要素を解説します。
<着物レンタル VASARA>
着物にはTPOにふさわしい「格」があり、着物の種類や紋の種類・数などで決まります。基本的な格は、第一礼装(正礼装)、準礼装、略礼装、外出着、普段着です。
第一礼装は冠婚葬祭に着用しますが、立場により着物の種類が変わります。準礼装は結婚式のゲストや式典などにふさわしい着物です。略礼装は結婚式の参列、入学式などフォーマルなシーンで着用します。ドレスコードが平服と指定されている場合にふさわしいのは略礼装の着物です。外出着は観劇や食事会、パーティーなど、華やかな装いが必要なときに着用しましょう。普段着は買い物やカジュアルな食事会など気軽な外出に向いています。
第一礼装は正礼装ともいわれ、最も格の高い着物です。結婚式や式典などで着用します。
打掛は結婚式の花嫁衣装で、白無垢(白打掛)や色打掛があります。最上格が白無垢で、中に着る掛下と角隠しなど小物も白で統一します。色打掛は挙式にも使えますが、披露宴やお色直しの際に着用するのが一般的です。色の種類は豊富にあり、なかでも赤やピンク、オレンジ系などが人気です。鶴や鳳凰、宝尽くしなど縁起の良い吉祥文様が描かれています。
既婚女性または未婚でも振袖を卒業した女性の第一礼装が黒留袖です。結婚式では新郎新婦の母親や仲人婦人、ゲストを迎える側の親族が着用します。背中、両袖、両胸に紋が入る最も格の高い五つ紋です。
上半身は無地で、裾まわりのみに吉祥文様などおめでたい柄が描かれています。上前衽から下前まで柄がつながり、1枚の絵のように描かれている絵羽模様が一般的です。
未婚女性の第一礼装で、ほかの着物よりも長い袖が特徴です。大振袖・中振袖・小振袖の3種類あり、それぞれ袖の長さが異なります。袖の長さは大振袖が3尺(約114cm)、中振袖が2尺5寸(約95cm)、小振袖が2尺(約76cm)です。
大振袖は結婚式の引き振袖などでよく着られています。成人式や結婚式に参列するときに着られているのが中振袖です。小振袖は袴と合わせて卒業式で着用するケースが多いです。
地色に黒以外の色を使った留袖を色留袖といいます。色留袖は未婚、既婚を問わず着用が可能です。黒留袖と同じく上半身には柄がなく、裾に絵羽模様が描かれています。
黒留袖は五つ紋ですが、色留袖は三つ紋や一つ紋で着ることもあり、紋の数で格が変わります。五つ紋は黒留袖と同様の格になるため、正礼装として着てもかまいません。三つ紋、一つ紋は格が下がり準礼装でも着られます。
黒紋付は黒地に五つ紋が付いた正礼装の着物です。現在ではいわゆる喪服として一般的に弔事で着られています。ただし、従来は慶事でも多く用いられていました。現在でもタカラジェンヌの正装は黒紋付に袴と決まっています。
正礼装に次いで改まった席で着られる礼装が準礼装です。種類が同じ着物でも紋の数で準礼装と略礼装に分類されます。準礼装はセミフォーマル、略礼装はいわゆる平服にあたります。
訪問着は未婚、既婚問わず幅広くさまざまなシーンで着られます。留袖と同様に上前衽から下前までつながる柄を描いている絵羽模様です。訪問着は肩から袖、衿にもつながるように柄が描かれている点は留袖と異なります。
季節の柄や色の種類が豊富で華やかな着物でもあります。三つ紋や一つ紋は準礼装、無紋は略礼装として着用できます。例えば、結婚式や披露宴に親族で出席する場合は三つ紋または一つ紋で、ゲストで出席する場合には一つ紋か無紋で着ます。
そのほか、略礼装でのパーティーや卒業式、お宮参り、七五三などには無紋でも差し支えありません。準礼装から略礼装まで幅広く着用でき、汎用性の高い着物です。
訪問着と色無地に次ぐ格で、訪問着を簡略化したような控えめな柄が特徴です。華やかな絵羽模様ではありませんが、上前衽から身頃や下前までつながる柄が描かれている付け下げもあります。帯や小物使いによりフォーマルからお出かけ着までさまざまなシーンで着用が可能です。
お茶会、卒業式、格式ばらないパーティーなどに向いています。一つ紋で礼装用の小物を合わせると準礼装にも着用できます。
黒以外の色で染められ、柄が描かれていない着物を色無地といいます。糸の違いや織り方により布地全体に模様のある地紋が特徴的です。慶事には明るい色を、弔事には紫や紺などの寒色を着ます。
三つ紋で準礼装、一つ紋または無紋で略礼装として着用が可能です。
江戸小紋や小紋は原則としてフォーマルには着用しません。しかし、例外的に略礼装として着用できる場合があります。以下では、略礼装からカジュアルな外出着について説明します。
江戸小紋も小紋の一種のため、礼装としては着用しません。ただし、江戸小紋のなかでも三役といわれる柄のみ略礼装として着用できます。江戸小紋の三役とは、鮫小紋・角通し・行儀です。また、大名ごとに定められていた文様を使った「定め柄」も一つ紋で略礼装として着用できます。ユーモラスな図柄を使った「いわれ柄」はフォーマルな席では着られません。
江戸小紋は遠目には無地に見えるほど小さな点や線を染めて繊細に柄を表しています。三役や定め柄以外の江戸小紋は、カジュアルなお出かけ着として粋に着こなしましょう。
型紙を使い文様をくり返し全体的に染められているのが小紋です。江戸小紋・加賀小紋・京小紋の3種類があり、それぞれ柄の雰囲気が異なります。吉祥文様などおめでたい古典的な柄やモダンな柄などデザインが豊富にあるのも特徴です。
柄が全体的に多く入った総柄はカジュアルなお出かけに着用します。柄が点在している「飛び柄」の小紋は、吉祥文様を選ぶと改まった席でも着用が可能です。
付け下げ小紋は付け下げより格が下ですが、小紋のなかでは格が上になります。小紋は同じ柄がくり返し染められていますが上下は決まっていません。
付け下げ小紋は柄が上を向くように肩を境に染め分けられています。「付け下げ」とついていますが、小紋のためフォーマルな席では避けたほうがよいでしょう。同窓会や観劇など華やかに装いたいときにおすすめです。
絞りは着物の種類ではなく、染めの技法の一つです。振袖や訪問着にも部分的に絞りを取り入れている柄や総絞りがあります。総絞りの振袖や訪問着は礼装として着用が可能です。訪問着のなかでも総絞りの格が下とされるのは、染み抜き紋が入れられず縫い紋のみになるためです。
生地を糸で縛ったり器具で挟んだりして染める伝統的な技法で、大変手間がかかります。高級で高価な絞りは、大奥でも贅沢すぎると禁止令が出たそうです。
街歩きやショッピング、食事会などカジュアルなお出かけにふさわしい着物も多くの種類があります。食事会や観劇などのお出かけに着られる着物や、街歩きや旅行などカジュアルに着られる着物などの特徴をまとめました。
織りの着物としての代表格が紬です。各地で作られ、産地ごとに風合いに特徴があります。日本三大紬に挙げられるのが大島紬、結城紬、牛首紬です。そのほかにも塩沢紬や久米島紬がよく知られています。
もとは出荷できないくず繭を利用し農家の自家用として織られたのが始まりです。染めの着物は格が高く織りの着物は格が下とされているため、高価な紬もカジュアルなシーンでのみ着用できます。
仕立て上がりすぐはハリがありますが、何度も着るうちに体によく馴染み着付けやすくなるでしょう。礼装には不向きですが、おしゃれ度は高く観劇や食事会、同窓会などにふさわしい着物です。
綿の生地で仕立てられた着物のなかで最もカジュアルに着られます。もともとは沐浴時に着られていた湯帷子を湯上がり時に着るようになり、夏のお出かけ着へと変化しました。長襦袢を着ず肌着の上に着る浴衣は、草履ではなく下駄を合わせます。夏祭りや花火大会など夏のイベントなどへのお出かけにぴったりです。
普段着の着物には木綿やウール、絹などの素材がよく使われています。お手入れが簡単な着物を着てショッピングや旅行に出かけてみましょう。
普段着として着られる代表的な着物の特徴は次のとおりです。
木綿 | ウール | 絣 | 銘仙 | 黄八丈 | |
素材 | 木綿 | ウール | 木綿など | 絹 | 絹 |
産地 | 福岡県・広島県・愛媛県など | 埼玉県・群馬県など | 八丈島 | ||
特徴 | 手入れが簡単で普段着に最適 | 軽くて動きやすいため普段着に適している | 久留米絣・備後絣・伊予絣は日本三大絣といわれている | くず繭を使うため比較的安価 | 八丈島の繭と自生している植物を使って染めた糸で織られた織物 |
裏を付けず単衣仕立てがおすすめ | 単衣仕立てのためお手入れが簡単 | 経糸や緯糸に絣糸を使って織る織物 | ほぐし捺染という型染の染色法で染められる | 鮮やかな黄色と格子柄が特徴 |
女性の着物の種類とその着用シーンを、以下の一覧表にまとめました。
結婚式 | 披露宴・パーティー | 不祝儀 | 入学式・卒業式 | 七五三・お宮参り | 観劇 | 食事 | お見合い | お茶会 | 訪問 | 夏祭り | |
打掛 | ◎ | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × |
振袖 | ◎ | ◎ | × | ○ | × | △ | × | ○ | ○ | ○ | × |
黒留袖 | ◎ | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × |
色留袖 | ○ | ◎ | × | ○
| × | △ | × | × | ○ | × | × |
黒紋付(喪服) | × | × | ◎ | × | × | × | × | × | × | × | × |
訪問着 | ◎ | ◎ | × | ◎ | ◎ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × |
付け下げ | ○ | ○ | × | ○ | ◎ | ◎ | ○ | ○ | ○ | ○ | × |
色無地 | ○ | ◎ | ◎ | ○ | ◎ | ○ | ○ | △ | ◎ | ○ | × |
小紋(江戸小紋) | × | ○ | × | × | ◯ | ○ | ○ | △ | ◎ | ○ | △ |
紬 | × | × | × | × | × | ○ | ○ | △ | × | ○ | △ |
浴衣 | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | ◎ |
ただし、同じシーンでも立場によって適した着物は変わります。例えば結婚式の場合、新婦であれば打掛もしくは大振袖、新郎新婦の母親であれば黒留袖、ゲストであれば訪問着や付け下げ、色無地を選ぶのが一般的です。
また、シーンによっては地域や流派でふさわしいとされる着物が異なる場合もあります。心配な場合には、事前に身近な人に相談しておきましょう。
着物は洋服と同様、季節に応じた種類を楽しむ文化があります。ここでは、季節や気温に合った着物の種類を3つ紹介します。
季節ごとにどのような帯や小物が合うか知りたい方は、以下の記事も併せてご覧ください。
袷(あわせ)は胴裏や袖裏、裾回しなどの部分に裏地を付けて仕立てられる着物です。10~5月頃まで着ることができ、おもに寒い時期に向いています。作りが丈夫で重厚感があり、写真映えしやすいため、季節問わず袷を着用するという方もいるでしょう。
1年のなかで最も長く着られるため、初めて作る着物に袷を選ぶ方も多いです。
単衣(ひとえ)は裏地を付けずに仕立てられる一枚物の着物です。季節の変わり目である6月頃・9月頃に着用しますが、気温によっては5月・10月に着用することもあります。
裏地がない分、袷よりも軽やかに着ることができます。着物の内側に着る長襦袢も透け感のあるものを合わせるケースが多いでしょう。
また、生地の補強や透け防止のため、お尻付近に「居敷(いしき)当て」と呼ばれる裏地を付ける場合があります。
薄物(うすもの)は裏地がなく、より透け感のある生地で仕立てられる着物です。着物の色次第では、長襦袢が透けて見える場合もあるでしょう。
経糸(たていと)と緯糸(よこいと)の密度を低くすることで風通しを良くし、真夏でも涼しく過ごせるようになっています。7~8月頃に着用するのが一般的です。
代表的な素材として「絽(ろ)」「紗(しゃ)」「麻(あさ)」などが挙げられます。
着物に使用されるおもな生地は、絹・木綿・麻・ウール・ポリエステルの5つが挙げられます。それぞれの特徴や着用シーンを表にまとめました。
生地の種類 | おもな特徴 |
絹 |
|
木綿 |
|
麻 |
|
ウール |
|
ポリエステル |
|
なお、絹は綸子や紋意匠、縮緬など、織り方によっても呼び名が異なります。
着物の種類以外にも、以下のような要素によって格は変わります。
など
例えば紋は一つ紋・三つ紋・五つ紋の3種類あり、紋の数が増えるほど格が上がります。着物によっては、幅広い場面で着用できるよう、あえて紋の数を減らしているものもあるようです。
着物にはさまざまな柄がありますが、そのなかでも吉祥文様や正倉院文様、有職文様といった伝統的な柄の着物は格が高いとされています。1枚の絵のように柄がつながっているものや裾にのみ柄が入っているものと比較すると、縫い目をまたがないように柄が入っているものは格が低めです。
また、格の高い着物の素材には絹が使われている傾向があります。
ここまで女性の着物について説明しましたが、男性の着物にも4つほど種類があります。以下でそれぞれの特徴を見ていきましょう。
男性の着物について詳しく知りたい方は、以下の記事も併せてご覧ください。
男性着物の基礎知識!格と種類、基本のアイテム&おしゃれ小物を全解説!
黒羽二重五つ紋付は、男性の着物のなかで最も格の高い第一礼装です。両袖・両胸元・背中の5箇所に紋が入っています。結婚式で新郎や仲人が着用するもので、黒羽二重五つ紋付には羽織・袴を組み合わせるのが一般的です。
素材は基本的に正絹が用いられるため肌触りが良く、高級感があります。
色紋付は、黒以外の生地に紋が入った着物です。女性の色留袖と同格にあたり、準礼装・略礼装として扱われます。披露宴のお色直しや二次会などで着用しますが、五つ紋の色紋付であれば結婚式の新郎の衣装として着用可能です。
落ち着いた雰囲気にする必要はあるものの、好みの色味を選ぶことができ、素材も羽二重や紋綸子などから選べるため、個性を出しやすい着物といえます。
なお、結婚式では両家の服装の格を合わせなければなりません。もし新婦が白無垢や色打掛などの第一礼装を選んだ場合、色紋付は格下となってしまいます。結婚式で着用したい方は、前もって話し合っておきましょう。
お召一つ紋付は縮緬から作られる絹織物で、準礼装として扱われます。基本的に外出着として着用され、ハリがあるためシワになりにくい、裾さばきが良く動きやすいといった点が魅力です。
一つ紋や三つ紋があると格が上がり、結婚式へ出席する際に着用できるようになります。略礼装として扱われ、女性の紋付の訪問着や色無地と同格になるのです。
紬は格が低い着物で、普段着として着用します。着物に帯だけを締めたラフなスタイルも可能です。外出着として活用したいなら羽織を、ほかの場所へ訪問する際は袴を合わせましょう。
着物には打掛や訪問着、江戸小紋などさまざまな種類があります。どのシーンにどのような着物を合わせるかは自身の立場や着物の格によって異なるため、「覚えることが多くて大変」と感じる方もいるかもしれません。しかし少しずつ理解を深めていけば、シーンに合わせた着物を自然と選べるようになるでしょう。
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